203.【身体の中が・・・トルネード!】
♡ 工事現場もトルネード‼ オット!立ち入り禁止‼
目が覚めたのだろうか?
少し冷たい風が目をス~ッと通り抜ける。
目が覚めたのだ。空気は、ほんの少し冷たい。
何とでも展開できるスチュエーションを、
見事に裏切り突き破って、身体中に熱さを感じる。
爽やかさを裏切って、感じるこの感覚は、
いったい何なんだろう?
あなたは、何かの“気配”を感じたことはありますか?
何かは分からないが、どことなく怪しげなる“気配”。
それなるものを、身の外の俗の世にでなく、
身の内なる肉体の中に、感じたことはありますか?
何だろうかと、記憶帳を捲(めく)ってみるが、
適当な回答が見付からない。
もっと古い記憶帳の中か?
それとも、もっと新しい記憶帳の中に、回答はあるのか?
丁寧に捲ってみたが、どこにも無かった。
それは、・・・新しい経験である。
抗癌剤が、動脈にドックン、ドックン送られて、
毛細血管を通って細胞を刺激した魔薬は、
蜂やサソリのような、単針でなく、
毛虫やハリネズミのような、多針を持った族(やから)に、
身体中を、隈なく刺された時のような、刺激によって、
電子レンジが水分子を揺(ゆ)らすように、
地震が大地を震わすように、
全身を微動させ、体温を上昇させ、
その震えが、“不随意運動”として現れる。
・・・それが、“気配”の正体だったのか?
抗癌剤は、こんなふうに、
使命に従って悪くない細胞まで攻撃してしまう。
だから負けまいと戦い続ける。
戦うことによって、私は死なないで済んでいる。
燃えている! 燃えている!
ドックンドックン燃えている。
室温、28.0℃。湿度、68%。体温、36.9℃。
室温冷却、扇風機。震え、微弱動。
・・・そろそろ、エアコンに切り替えるか。
たとえは、ドッタ~ン!と音がしたとする。
あれは何の音だろか?と不思議に思う。
けれども、その音が何だろうとは、確かめない。
それは、面倒だからだ。確かに面倒だ。それは間違い無い。
風でドアが閉まる音? 物にぶつかった音?
人が倒れた音?・・・そんなことは確かめない。
幸い、今は、「物にぶつかった」程度で済んでいる。
倒れた音なら死んでいる。
でも、そういうことは考えないし確かめない。
それは面倒だからだ。
それは正しい。いや、間違ってはいない。
確かめてあげないから、倒れられない。
だからあなたは死なないで済んでいる。
ここまで書いたら、
一時の興奮酔いも覚め、少し穏やかになって来た。
ただ今、午前4時21分。
水を一口。頭を撫ぜて、もう一度、横になろう。
腹に落ちた水が、まるで火消役のように、
あちこちキュルキュルと回って、
鎮火(ひしずめ)している。
折角、穏やかに眠ろうとするなか、
あのイラ付く“ヒガヒガ”が、またうるさく騒ぎだした。