癌と付き合う Simojiさん(折々の想い)

お役に立つかどうかは分かりませんが、折々の想いを

203.【身体の中が・・・トルネード!】

 

f:id:simojisannoomoi:20200801190205j:plain ♡ 工事現場もトルネード‼ オット!立ち入り禁止‼

 

 目が覚めたのだろうか?

少し冷たい風が目をス~ッと通り抜ける。

目が覚めたのだ。空気は、ほんの少し冷たい。

 何とでも展開できるスチュエーションを、

見事に裏切り突き破って、身体中に熱さを感じる。

爽やかさを裏切って、感じるこの感覚は、

いったい何なんだろう?

 

 あなたは、何かの“気配”を感じたことはありますか?

何かは分からないが、どことなく怪しげなる“気配”。

 それなるものを、身の外の俗の世にでなく、

身の内なる肉体の中に、感じたことはありますか?

 

 何だろうかと、記憶帳を捲(めく)ってみるが、

適当な回答が見付からない。

 もっと古い記憶帳の中か? 

それとも、もっと新しい記憶帳の中に、回答はあるのか?

丁寧に捲ってみたが、どこにも無かった。

それは、・・・新しい経験である。

 

 抗癌剤が、動脈にドックン、ドックン送られて、

毛細血管を通って細胞を刺激した魔薬は、

蜂やサソリのような、単針でなく、

毛虫やハリネズミのような、多針を持った族(やから)に、

身体中を、隈なく刺された時のような、刺激によって、

電子レンジが水分子を揺(ゆ)らすように、

地震が大地を震わすように、

全身を微動させ、体温を上昇させ、

その震えが、“不随意運動”として現れる。

・・・それが、“気配”の正体だったのか?

 

 抗癌剤は、こんなふうに、

使命に従って悪くない細胞まで攻撃してしまう。

 だから負けまいと戦い続ける。

戦うことによって、私は死なないで済んでいる。

 燃えている! 燃えている! 

ドックンドックン燃えている。

室温、28.0℃。湿度、68%。体温、36.9℃。

室温冷却、扇風機。震え、微弱動。

 ・・・そろそろ、エアコンに切り替えるか。

 

 たとえは、ドッタ~ン!と音がしたとする。

あれは何の音だろか?と不思議に思う。

けれども、その音が何だろうとは、確かめない。

それは、面倒だからだ。確かに面倒だ。それは間違い無い。

 風でドアが閉まる音? 物にぶつかった音?

人が倒れた音?・・・そんなことは確かめない。

 幸い、今は、「物にぶつかった」程度で済んでいる。

倒れた音なら死んでいる。

 でも、そういうことは考えないし確かめない。

それは面倒だからだ。

それは正しい。いや、間違ってはいない。

 確かめてあげないから、倒れられない。

だからあなたは死なないで済んでいる。

 

 ここまで書いたら、

一時の興奮酔いも覚め、少し穏やかになって来た。

ただ今、午前4時21分。

 水を一口。頭を撫ぜて、もう一度、横になろう。

腹に落ちた水が、まるで火消役のように、

あちこちキュルキュルと回って、

鎮火(ひしずめ)している。

 

 折角、穏やかに眠ろうとするなか、

あのイラ付く“ヒガヒガ”が、またうるさく騒ぎだした。