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15.【生き、生く証・・・4】
~遠い、遠い、その先は・・・~
まだ冬の凍てつく北風が痛い頃
庭の片隅から微かに「カサッ」という音を聞いた
何の音だったのか直ぐには気付かなかったが
確かな音色であった
ほんの僅な余韻を頼りに そっと手を伸ばし
落ち葉を一枚一枚 丁寧に取り除いてみた
そして見付けたのだ そこには正に春が在った
福寿草の黄色い花びらを優しく包んだ緑い芽が
たった今 頭をムクッと持ち上げた瞬間であった
なぜかとっても嬉しい気持ちになり
そっと、そ~っと落ち葉を元に戻した
ガンの新芽が首を覗かせたのか、
元気に戦う気力が生まれたのか
明日を夢見ようとする勇気が湧いたのか、
未だ、いずれかは知る由もないが、
僅かに気が晴れる嬉しさが、漂う出来事であった。
静かにしていると、自然に目が閉じる。
目が閉じた時、見えて来るものがある。
真っ暗なトンネルの遥か先、何かがうごめいている。
とっ捕まえて、引っ張り出さないと、その先は見えない。
先が見えた方がいいのか?
見えないままにしておいた方がいいのか?
どうしても自分では判断が整わない。
どうしたらいいのか、教えて欲しい。・・・
いや、教えてくれなくていい。教えて欲しくない。
何であるのかを知ったところで、何とも致し方ないから。
知らないままの方が、重圧を感じなくて済むし
そこまでは、何とか辿り着けるような気がするから。