199.【それなのに、・・・それなのに!】
♡ ♪新しい朝が来た。希望の朝だ。(藤浦洸氏作詞・藤山一郎氏作曲)
何分くらい聞こえているのだろうか?
甲高い(かんだかい)金属音と、ノイズ音と、
噎ぶ(むせぶ)ような音が混ざり合い、
湿った空気に伝わって、途切れることなく聞こえて来る。
本当は、と言うよりは、
単音はあの「ヒガヒガヒガ」という音、いや声だ。
もう、お分かりだろうと思うが、
あの「ヒグラシゼミ」の泣き声だ。
この泣き声、片手や両手の限りではない。
それこそ、何百匹という単位かもしれない。
このセミたちが一斉に鳴く。
すると鳴き声は絶えることなく、
ヒガヒガでなく、
おどろおどろした、妙に不気味な声に変化する。
その声が、朝焼けの重い空気に伝わって、
どこからともなく響き渡る。
ヒグラシは漢字で「日暮」と書く。
文字通り夕方に鳴くのかと思ったら、朝にも鳴く。
この朝に鳴くことが、また奇妙な気分にさせているようだ。
「朝焼けの日暮」やはりどう考えても、
悩まし気であることは確かだ。
そうそう、ヒグラシは「カナカナ」と鳴くと言われるが、
この地方では、「ヒガヒガ」と鳴く。
もっともそう聞こえるのは、私だけかもしれないが?
この「ヒガヒガ」が、
日が暮れるというイメージ音と、化したのかもしれない。
しばらく鳴き続けると、
その声は、少しずつ、少しずつ、萎(な)えていく。
それは、耳が慣れることとは違い、
自然と鳴くセミが少なるように、
段々と、段々と、遠ざかって行く。
やがて、こっちでザワザワザワ、あっちでザワザワザワ。
そして、こっちでヒガヒガヒガ、あっちでヒガヒガヒガ。
・・・・ヒガ・・・ヒガ・・・ヒガ・・・
とうとう、その声が聞こえなくなる!
時は、午前4時54分・・・
・・・そして、静寂が戻った。一日が始まる‼
あのね! このね! このセミの声。
夕暮れの杜の中で聞いたりすると、
結構、趣があったりするんですよ。
一日の終わり。
今日も頑張れたなぁなんて、ホッとしたり、
明日のための元気が湧いたり、・・・ヒガヒガヒガ‼
どんなに良い声や、どんなに元気付けてくれる音でも、
人によっては、あるいは、度を過ぎると、
それは不快感でしかなくなるんです。
・・・気をつけましょう。人の気持! 人の想い‼